|
・水分子と生体高分子
電気的にプラスな水素を含む物質の水素原子が他の分子の電気的にマイナスの元素と引き付けあうことを「水素結合」と言う。水素結合は水素原子と酸素原子との間や、水素原子とフッ素原子の間などで起こる。
この水素結合は前回にも触れたが、生体高分子の立体構造構築に関与している。単純化して言うとタンパク質は図9の様に二重結合を持つ酸素と窒素につく水素の間で水素結合をして立体構造を構成する。これはあたかもチェーンとチェーンが絡み付くような感じである。
実際には、このタンパク質同士の分子内部の水素結合だけではなく、水分子もタンパク質の回りを囲むような形で水素結合し、タンパク質の立体構造を支える。タンパク質の周囲にはおおむね一重の水分子が取り囲んで、タンパク質の立体構造をガードしている(図10)。タンパク質はこのような立体的な構造によって初めて生命における独自の働きを発揮することが出来る。
あらゆる生物の生存の本質はこの水分子とタンパク質とが形成する立体構造であると言っても言い過ぎではない。生きているということは、このタンパク質と水の織りなす立体構造をもとに生体がその機能を保持していると言うことである。逆に、死とはタンパク質が水との立体構造を維持できず、その結果、生体機能を失うことである。
例えば、生体が氷点下以下の温度でも凍らずに生存できるのはこの構造化された水のおかげである。タンパク質の回りには3つの水の層が存在する(図11)。その中でタンパク質にもっとも近く接している水は、マイナス80度くらいまで凍らない。これは水がタンパク質との水素結合などの相互作用によって束縛され、そこの水分子が固体結晶へ配向変化、すなわち結晶構造をとりにくいからである(文献3)。
このように水は外からの温度刺激から生体をガードする。また温度のみならず、イオン濃度の局所的な変動などの刺激に対しても、タンパク質を取り巻くように構造化された水はタンパク質を保護する機能を持っている。
水の持つこれらの生命への寄与はタンパク質のみならず核酸など他の生体高分子についても同様である。水は生命の本質と深く関わっている。
|