・魚の鰓

 魚の鰓は水から酸素や塩類を効率よく摂取するための特別に精緻で複雑な構造を持つ。すなわち、対向流系という非常に効率的な換気システム(O2を吸収しCO2 を排泄。呼吸系にこれを持つのは魚類だけ)を持つ(図13)。また、魚の鰓の構造は、鰓の各葉がさらに二次的に枝分かれをして、大気中よりも遥かに少ない濃度の水中の酸素の換気をより効果的にするために、より広い表面積を持つ(図14)。(文献8、9)

 それは非常に精緻な構造で、鰓のわずかな損傷が魚を死にいたらしめる。食材となる魚を思い出して頂こう。死んだ魚は鰓がもっとも痛みやすいので、魚を捌く際にはいち早く鰓を除ける必要があることをご存じの方も多いと思う。また、魚の鮮度を見るのに鰓の状態を見ることもある。

 ディスカスの鰓には粘膜細胞があるのだが、寄生虫や不適切な水質に侵されると粘膜細胞の剥離や異常増殖が起こり、換気能力が著しく低下する。

 健康なディスカスの鰓は赤〜濃いピンク色である。この色が薄くなったり、白ぽかったりすると貧血性の問題、白色ないしくすんだ灰色の輪郭の斑点が有る場合はその箇所の鰓の細胞が死んでいる(細菌的な問題である場合が多い)。(文献8)

 呼吸の他に魚の鰓が持つもう一つの重大な機能が体内外の浸透圧の調整である。淡水魚の場合、身体の内外の浸透圧差のため、絶えず、水が体内に侵入してくるという危機に晒されている。そのため淡水魚は、鰓から水が侵入しない、塩類(淡水では当然その濃度は薄い)を水中から鰓を通して積極的に体内に取り入れる、尿からは塩類を殆ど出さないな

どの特異的な生体メカニズムを持つ。鰓には淡水の中の少ない塩類を積極的に吸収するために特別な働きをする細胞も存在する。

 それに加えて殆どの魚の場合、アミノ酸代謝によって発生するアンモニアの80%ちかくが鰓を通して排泄される(文献9)(多分この排泄は濃度勾配に依存する)。血中のアンモニア濃度が上がると脳に損傷を与える。

 鰓の果たす役割は魚の生存にとってとても大きなものである。そして、このような鰓の機能を考えると、必然的に飼育水の水質を考え、鰓を保護してやらなくてならない。

 ディスカスの場合鰓に特に注意を払わなくてはいけないもう一つの理由がある。これについては後述する(「鰓吸虫」の項。)