・温度

 魚と温度の関係は我々の想像以上である。何故なら、魚は変温動物だからである。魚は皮膚の神経で温度を感じると言われている訳だが、多くのものは0.05℃くらいの微妙な変化を感受出来る(文献9)。

 なぜ変温動物だと温度の影響を受けやすいのかは、生体中の酵素反応の速度が温度に強く左右されるからである。変温動物の体温は環境の温度とほぼ等しくなるので温度の上昇によって生体反応の速度が早くなり、温度上昇による生理的な影響が強く現れる(文献9)。但し、通常、生物は生存可能な適温を有するのでその範囲での温度上昇での話である。

 適温の範囲を超えても、温度に対して徐々に慣らすことをすればある程度範囲外の温度にも適応可能ではあるが、温度の急変は致死的で有ることが多い。

 また、ディスカスを飼育の際によく問題になるのが飼育温度である。ディスカスは比較的温度変化に強い魚のようである。35℃くらいの温度にも耐える。しかし、あくまでも耐えるとしか言いようがない。現実、高温での飼育は、以下のような問題点があることを熟知してから行うべきである。



  1. 溶存酸素が低くなる(気体の液体に対する溶解度は温度が高くなると減少する=熱運動が多くなるので気体分子が液体から飛び出しやすくなる)

  2. 温度が高いと生体内の諸反応は早くなるので概して生体の酸素要求量が高くなる。が、1.のように酸素は少なくなるので鰓に負担がかかる。

  3. 温度が高いと微生物の活動も活発になる。時として濾過細菌の過剰な繁殖が起きうるので注意を要する。そんな場合、pHが異常なスピードで落ちる。またOPRも下がっていく。

  4. 極端な高温の場合は生体内の反応が逆に悪くなる。酵素の至適温度を越えてしまうと酵素は失活といって生理的な機能を果たさなくなってしまう。

  5. 高温によって生体内の熱運動が盛んになり、タンパク質、脂質などで構成される生体膜の構造、機能変化が起きる。

 従って高温で飼育する、もしくは治療的な意味で高温にさらす場合、十分なエアレーションの確保、pH,ORPの監視、魚の鰓に異常が無いかを常に確認するなどの留意が必要で有る。出来たら高温は避けたほうがよいことは言うまでもない。28℃くらいまでで飼うのが一番飼いやすいし、繁殖もしやすいであろう。高温での飼育はより早く魚を大きくできるので、ブリーダーなどに向いたやり方ではあるが、上記のような理由で十分な注意、監視が必要であり、アマチュア向けではない。

 余談であるが、香港のブリーダーは通常ヒーターを備えている。これは彼の地では気温が低いときはヒーターが絶対に必要なレベルまで下がるからである。逆に夏場の暑いときは水温を下げる意味で水換えを頻繁にするようである。気温は35℃を越えているのに水温は30℃付近でキープされている。