・発情への刺激因子

 温度は魚の一連の生殖活動(発情、発生、生育)で重要な意味を持つ。一般的に魚は水温や日照時間で季節の変動を知り、一年の有る特定の時期に生殖活動を行うと考えられている。春型、春夏型、秋型などの産卵パターンを持った魚が多く知られる。また、産卵周期にはサケなどのように一生に一度しか産卵しないパターン、一年に一度産卵し、何年か繰り返すパターン、一回の産卵時期に産卵を繰り返すパターン、特に周期的といったわけでなく年中産卵するパターン(熱帯魚には多い)といった意味での分類わけも可能である(文献11)。

 水温、日照時間は通常(自然界では)連動して変化する。ディスカスの自然サイクルでの産卵様式はつまびらかではないが、人工飼育環境下ではあまり夏場には繁殖しないようである。通常の人工飼育環境下では日照時間に相当するライティング時間のコントロールは行わないので、ディスカスの産卵には温度が最重要なファクターと言える。

 さらにディスカスが産卵を行うきっかけとなる要素として、電気伝導度の変動、気圧の降下が上げられる。

 アマゾンの雨期には水位が10m以上も上昇することもある。ジャングルは水没し複雑な迷路と化し、逃げ場の豊富なこの時期は、魚たちの絶好の産卵チャンスとなるのでは無いかと想像する。それ故、ディスカスの発情が気圧、電気伝導度の変化に敏感なのでは無いかと推測する。ディスカスの発情は雨期の到来に敏感であると言える。

 話は難しい話かもしれないが、魚の性的な成熟に関する中枢神経系の関与は他の脊椎動物とほとんど同じであると考えられている。

つまり視床下部に性中枢が有り、視床下部から放出される性腺刺激ホルモン放出ホルモン(LH−RH)の刺激により、卵胞刺激ホルモン(FSH)や脳下垂体前葉の黄体形成ホルモン(LH)が血液中に放出され、雌では卵の成熟、排卵、黄体形成、着床などの性成熟がコントロールされる。また、卵巣からは卵胞ホルモン(エストロゲン)、黄体ホルモン(プロゲステロン)が放出され、脳にフィードバック信号を送る役目を果たしている。