・「ROの原理」の真実

 前項でROがNASAで開発されたものではないことをお教えした。次にROの常套的宣伝文句である、「1オングストロームの細孔ですべての不純物を取り除く」という「ROの原理」について茶々を入れたいと思う。

 実際のところ、この「原理」は嘘ではない。膜の細孔はオングストロームオーダーの大きさのようである。でも、実はこれだけではRO膜に対する水のみの選択的透過性を説明できない。つまりこの「原理」だけでは不十分なのである。極端なことを言えば、1オングストロームの疎水性表面(膜面)を持つ膜を考えると、このような膜は水分子を通しえない。孔が小さければ良いというわけではないのである。

 溶媒(例えば水溶液中の水)を選択的に透過させる膜は一般的に膜表面が溶媒の層で覆われているのである(下図参照)。そのためには膜の表面の素材には溶媒との親和性が必要となってくる。溶媒が水で有れば膜表面が親水性を持ったなければ水を選択的に透過させることは出来ないのである。

 膜表面に出来る溶媒層の厚み:tの2倍以下の膜孔の口径を備えていればその膜の孔は溶媒のみを通し溶質を通さない。細孔付近の膜表面に出来る溶媒層が妨害して、不純物である溶質が細孔へ進入出来ないのである。

 というわけで、単にオングストローム・オーダーの篩いだけでは、「ROの原理」を説明できないのである。水分子の大きさは1.38オングストローム、カリウムイオンの大きさは1.33オングストローム、ナトリウムイオンの大きさは0.98オングストロームと言われている。このように実際には溶媒である水よりも溶質であるイオンのほうが小さかったり水とあまり変わらない大きさだったりするので、いくら精緻な篩いを考えてもイオンなどは除去出来ないと言えるだろう。

 念のため申し添えておくが、上記のセオリーだけでも「ROの原理」をすべて説明できないといわれている。「ROの原理」はまだ完全には解明されていないのが現状である。

 この項の参考文献は文献13、14。