ここまでのまとめ

 今までどのようなことを書いてきたかとりあえずまとめをする。

 連載記事になるはずだった初稿として、まず電気伝導度、水道水質の実態、酸化還元電位を中心に書かせて戴いた。特に水槽環境内の酸化還元電位については議論される機会が少ないために未知の部分も多く、異論も少なからず有ろうかと思うが、取りあえず筆者の考えをまとめさせて戴いた。これに加えて、1998年から1999年前半くらいで、より実践的なこと、すなわち、浄水器の選定やその使い方、餌の持つ栄養学的側面のアプローチ、(特に飼育難度が高いと言われる)ディスカスを飼う上での留意点などを加筆してきた。

 特にこの追加部分には、かなり斬新なアイデアがふくまれているので、奇を衒うような発言と勘違いされそうで怖いのであるが、決してそういう意図ではなく、今まで誰一人と語りえなかった真実を書いただけのことである。如何に今までのディスカスの世界が誤謬に満ちているかをご高察戴きたい。ついでに、この真実と現行のビジネスライクなディスカス飼育論とのギャップが私の研究やこのウェブページのモチベーションであることをも判って戴きたい。巷には余りにも出鱈目なセオリーが多すぎる!!!しかもそれが当然のこととして受け止められているのは、余りにも可笑しいし、悲しい。


 この文章を書き始めた時点(多分1997年夏ごろ)で「ここのところディスカスの世界が少し活気を呈してきたようである。が、残念ながら今のままで行けば、過去に何度か繰り返されてきた、『ディスカス・ブーム』の再来でしかないような気がする。『ディスカス』が一過的な『ブーム』では終わらずに、本当に永続きできる「趣味」として根付くには、科学的な理解という意味での『ホビイスト』のレベルアップは避けて通れない。」と言わせて貰った。

 しかし、その2年後の今、当時持ちなおしかけた景気の動向はさらに低迷の一途をたどり、多くの熱帯魚店が閉店したという報をよく耳にするような現実となった。図らずも私の杞憂が違うかたちで的中した感があるが、このような不景気の時代に生き残れない店が何故多いのであろうか?それは、上で述べたように「ディスカス」飼育のセオリーを知らない(確立されてない)で生体あるいは器具を売ろうとするからではないだろうか?他のジャンルの趣味の世界と比べて斯様に貧弱な土台しかない趣味の世界とその顧客をターゲットにしたビジネスの非力さを痛感せざるをえない。ベーシックなセオリーが無いが故の悲劇、と言うよりは笑い話である。もう少しノウハウが整備されていればここまで悲惨なことにはならなかったであろうし、息の長い趣味、あるいはビジネスとして定着できるのであろうに。今後、例え景気が回復基調にのっても雨後の竹の子ように実力のないショップが出来ては消えになって欲しくないものである。

 まあしかし、われながらなんでここまで言わなければいけないのであろう。それは多分、現在でも残る店の大多数の実力が総じて貧弱で、それを危惧するからに他ならない。悲しいかな、現在のこの不況を生き残っている店の多くはテクノロジーに乏しい安売りをメインにした店、若しくはスケールメリットに幅を利かせる大規模店(ホームセンターやなんでもありのペット総合店)であり、プロショップといえるレベルの専門店の生き残りはごく少数である。

 今のままではおそらく歴史は繰り返されるだけであろう。景気が良くなればまた訳の分かってない専門店もどきが乱立し、潰れて行くのであろう。みなさん、もう少し勉強の余地がありません?そういう店ができてしまうのは現在のホビイストの知識不足が原因の一つに他ならない。このような半端な商売を志す者にとって、みなさんは金のなる木にしか見えないのであろう。

 もっとも、もっとたちの悪いのはインターネットで安易に程度の低い情報を流す心ない人たちである。インターネットを使って情報発信されているみなさんに失礼なのは承知の上だが、インターネットで本当に価値のある熱帯魚やディスカスの飼育情報を流している人がいるのか?これはもっとも熱帯魚の世界だけに限ったことではないのだが・・・まあ、ゼロとは言わない。だけどほとんどいない。人様にものを言うのに、お見せするのにろくに勉強もしないで、飼っている魚の自慢や流行の飼育論もどきだけを並べるのは恥ずかしくないのだろうか?そんな下らないものを発信するのは止めて欲しい。サーチエンジンの的確なヒットを阻害し、人様に余計な時間を使わせるだけであり、人様に(特に初心者の方たちに)誤ったセオリーインプリンティングするだけで百害こそあれ一理無い。そんなページがあまりにも多いのは非常に問題である。確かに発言するのは自由、言うだけはタダ、だけど、本当に見るに値するページは多分、2,3しかない。猫も杓子もインターネットってなんか間違っている。

 私がこのような批判を声高に繰り返す、もう一つ大きな理由を述べさせていただく。私はディスカスなどの魚の飼育が大好きであるとともに、今までの勉強傾向や職業柄のためか、科学的、化学的な考察、特に水関係や衛生化学についてのそれに非常に興味をそそられる。だからこそ、みなさんに正しいことを覚えていただきたいし、いい加減な話もしたくないし、されたくないのである。

 水ほど生命にとって大事なものはないのに、これほどおろそかな取り扱いを受けているサブジェクトも少ない。それは熱帯魚の飼育に於いても然りなのである。目に見えないものについて人は思考することを忘れがちである。魚の鰓がおかしくなってからではすでに遅いのである、その前に水について気を付けるべきなのである。鰓や魚がおかしいのではない。水がおかしいのである。勘違いしないように。また、それと同時に、魚に奇形が出るほど農薬や洗剤を含んだ水を人が飲むことに疑問を持ってほしい。人に奇形が出てからではそれこそ手遅れなのである。

 魚を飼う、ひいては人間が生活を営んでいくうえには水を正しく理解する、そして正しく活用することが不可欠な要素なのである。熱帯魚飼育を機に、水を正しく勉強することに目覚める人がいてほしいものである。今までないがしろにされてきた水について考えることの重要性に気づいてほしい。

 最後に一つだけ謝らなければならないことがある。それは、RO使用時の水の再構築に使う水質改善剤や餌に使う添加物などについての説明では核心について少しぼやけた表現しか出来なかったことである。いろんな事情があってのことなのであるが、一番大きな理由はやはり自分の利益のためである。中身の詳細を詳しくあかせば自分が売ろうとする製品が売れなくなってしまうのは必定である。概ねのことは書いているが一番の核心は記載されてない。それについては大変申し訳ないのであるが、そのあたりは自らの今後の飯の種にしたい部分であるのでひらにご容赦いただきたい。



 林 研司郎 ディスカス飼育研究所(旧K.H.Trade)代表。薬剤師。

       1958年生まれ

    早稲田大学第一文学部心理学専攻卒(統計的手法、実験計画などを学ぶ)

    東京理科大学薬学部製薬学科卒(薬理学、物理化学などを学ぶ)

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